人文学と法学、それとアニメーション。

人文学と法学、それとアニメーション。

2021-01-01から1年間の記事一覧

人生の長短と何を残すか──『No Time To Die』と『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』

今年公開された『No Time To Die』と『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』の主題(の少なくとも一部)は、全くの偶然によるものであろうが、同じものだったように思う。 『No Time To Die』は、人生の残り時間を使って何を残すかということについての対比が軸に…

スピルバーグ監督『The Post』(邦題『ペンタゴン・ペーパーズ』)──報道の自由生成に向けた綱渡り

1 はじめに 本作は、アメリカ合衆国の表現の自由を巡る最高裁判例史にその名を刻むNew York Times Co. v. United States, 403 U.S. 713(1971)をモデルに、New York Timesではないもう一社の被上訴人Washington Postの社長キャサリン・グラハム(メリル・ス…

人というもの──呪い、友情、愛、理想と挫折──『劇場版呪術廻戦0』覚書

1. 友情と自信 これは原作の0及び本筋からしてそうであるが、呪いを軸とする以上、人と人との繋がりのあり方の話が根幹にあるのは間違いない。しかし、0の映画は、乙骨憂太の声優に緒方恵美を起用し、エヴァンゲリオンの碇シンジの筋を想起させつつ「誰か…

あなたをとおしてわたしをつくる──近代的自我形成物語としての『やがて君になる』

仲谷鳰『やがて君になる』はいわゆる百合作品の金字塔と目されている。 各種サブスクあるいはレンタルビデオ店での消費者の便宜、あるいは分析の開始点としてのprima facieとして百合ジャンルを使うのはともかく、分析の結果として使うことはおそらく不適切…

時が再び動き出すことを──『フラ・フラダンス』覚書

『フラ・フラダンス』、あまりに良すぎました… 基本軸は個性的で「今までで一番残念な」新人5人のフラダンサーが、ぶつかり合いながらも日々成長していく物語。そして合間合間に入る福島の固有名詞、具体的場所と、東日本大震災の傷跡の示唆。 死(つまり震災…

本物を目指すことと諦めること━━『EUREKA/交響詩篇エウレカセブンハイエボリューション』覚書

ハイエボリューションシリーズは全て見ており、またテレビ版も見ているのであるが、いかんせんよくわからない部分が多々あった。苦笑 しかし一方で、まあどうせ皆そんなものだろうということで、差し当たりの感想をここに記しておく。 よかったところ ・エウ…

各人のペースで受け容れて──『中二病でも恋がしたい』覚書

六花の中二病は、父を亡くし現実を受け容れることができなかったときに、いわば心の防壁として、中2病全開の勇太をたまたま見て、そのフィクションにより現実から遊離するあり方を借用したからである。 (※心の防壁として突飛な衣装を纏うあり方は、さながら…

ルックスは果たして無関係か?━━『アイの歌声を聴かせて』覚書

1 あらすじ 完全に今の日本の田舎の木造一軒家であるのに、そこに溶け込むAI機器。 たとえば、朝起きる際にアラームの代わりに対話型AIが語りかけてくる。 そしてご飯の炊き加減やみそ汁のネギを入れるタイミングでの火加減調整も口頭で指示できる。 周辺は…

置き去りの被害者━━『最後の決闘裁判』覚書

本作は三部構成で進行する。 冒頭:決闘開始のシーンが少し 第一章 ジャン・ド・カルージュにとっての真実 第二章 ジャック・ル・グリにとっての真実 第三章 マルグリット・ド・カルージュにとっての真実──真実 当然、「反復」であるから、「差異」は何かを…

アリアと泥合戦:描けるということは、存在するということ──『映画大好きポンポさん』評註

1 はじめに 『映画大好きポンポさん』には2つの軸がある。 一つは、ジーン監督を中心とする「夢と狂気の世界」の映画製作のお話であり、もう一つは銀行員アレンを中心とする信用構造のお話である。 後者の信用構造の話は別稿に委ね、本稿では前者の映画製…

『かげきしょうじょ!!』アニメ化で消されたもの──歌劇・歌舞伎・戦争

前シーズンやっていた『かげきしょうじょ‼︎』アニメ版を見て、特に野島聖先輩が気になり原作漫画で続きを読もうと思い立ち、読んでみた。 すると、原作漫画からアニメ版に翻訳するにあたり、極めて大きな改変がなされていることに気がついてしまった。 それ…

資本主義システムへの、あるいは特別な何者かになりたいという欲求への、ささやかな抵抗━━『Sonny Boy』試論

1 はじめに 『Sonny Boy』は学校のみが異世界に漂流するという基本設定や超能力の話、しゃべる犬猫、毎話毎話出てくる奇天烈な世界が特徴的な作品である。そして、作画や劇判もさることながら、主題系方面の読解も難解な作品である。 そこで、本稿ではまさ…

フィクションと現実──京都アニメーション放火殺人事件

1 社会 人間社会の基本的基盤は集団、徒党である。 徒党形成の鍵は贈与交換(échange)である。 2以上の集団間で財やサービスを恒常的にやったりとったりし、損得を曖昧で不透明な状況にしておくというものである。 この徒党、集団、あるいは社会が、個人を追…

現実と距離を取るために──山田尚子監督『平家物語』第一話評註

山田尚子監督がこのタイミングで監督作品を作るということについて、京都アニメーション放火事件という文脈は外せないように思う。それは、既に事件前から、京都アニメーションを去ることが決まっており、また事件前から本作『平家物語』の監督が決まってお…

フィクションの功罪——『岬のマヨイガ』覚書

冒頭のシーケンスは(おそらく東日本大震災の)津波が街を襲ってそこまで日がたっていない沿岸の被災地のなかを、避難所とおぼしき高台の体育館を出たキワ(おばあちゃん)とユイ(17歳)とひより(8歳)が歩いているところから始まる。 流失・倒壊した建…

Roe v. Wade 判決(1973)の終わりの始まり?──Whole Woman’s Health v. Jackson, 594 U.S. ___ (2021)覚書

※Whole Woman’s Health v. Jackson, 594 U.S. ___ (2021)にざっとではあるが折角目を通したので覚書程度のものをここに記しておく。 2021年9月1日にWhole Woman’s Health v. Jackson, 594 U.S. ___ (2021)決定が下され、「すわ保守派で固められたロバーツ・…

法制度vs社会慣行/社会慣行認定権者としての国会vs裁判所/夫婦別氏の社会慣行不存在を埋める旧姓通称使用──第二次夫婦別氏訴訟(最大判令和3年6月23日裁判所ウェブサイト)覚書

1.法制度vs社会慣行 本判決の多数意見は、2頁にすぎず、実質的な理由は各小法廷から一人づつが出て書かれている深山・岡村・長嶺補足意見にあると見てよいであろう。そして、かかる補足意見と三浦意見、宮崎・宇賀反対意見、草野反対意見が対抗するという…

忘却への抵抗とショッピングモールの換骨奪胎──『サイダーのように言葉が湧き上がる』評註

1 全体的な印象 『映画大好きポンポさん』のポンポさんの金言に従って、「映画なんて、結局、ヒロインを魅力的に撮れればそれでいい」と思うので、本作についても、チェリーがマスクを外した心からの笑顔が見れた、それだけでもう満足なのです。 が、多少…

どうか、もう迷わないように――藤本タツキ『ルックバック』評註

藤本タツキ『ルックバック』が2021年7月19日午前0時に公開された。 内容といい、公開のタイミングといい、これは2年前の2019年7月18日に発生した京都アニメーション放火殺人事件を念頭に置いていることはほぼ間違いないだろう。 本作の主題の一つは、作家論…

素材は一流、コックは二流──『竜とそばかすの姫』評註

【あらすじ】 母の事故死をきっかけに歌えなくなってしまった高知県の片田舎に住む根暗でそばかすのある女子高生・すず。友人の誘いで、人間の潜在的な能力を読み取りアバター「As」を自動生成し、体感覚ごと仮想現実空間に引き込む「U」に登録し、Bellとな…

西村経済再生担当大臣の金融機関への取引停止要請問題と憲法66条3項

西村康稔経済再生担当相が「「(酒提供停止に)応じない店について、情報を金融機関と共有し順守の働き掛けを行っていただく」と、2021年7月8日の記者会見で発言したことが騒動となり、翌9日には撤回、14日には野党一致の辞任要求が出るに至っている( https…

wi(l)d-screen baroqueとは、キャラクターを生身の人間にすること。すなわち、魂(animus)を吹き込むこと──『劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト』まとめ

※本論稿は本ブログの『劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト』に関する3つの断片的な論稿をベースにしつつ大幅に加筆修正したものである。 hukuroulaw.hatenablog.com hukuroulaw.hatenablog.com hukuroulaw.hatenablog.com 華恋、ひかり、真矢、クロディー…

Roseliaの軌跡━━『BanG Dream! Episode of Roselia Ⅰ : 約束』​『BanG Dream! Episode of Roselia Ⅱ : Song I am.』覚書

本稿筆者は「BanG Dream!」シリーズに触れていない。 どころか、ソシャゲ全般をしていない。 がともかくも映画として2段構成でそれ自体として完結しているため、シリーズ背景抜きに覚書を書いておくこともあながち無駄ではないであろう。 (なお、バンドリ…

キャラクターが「死ぬ」ことの意味━━『ゾンビランドサガリベンジ』12話と『劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト』覚書

突然であるが、『ゾンビランドサガリベンジ』12話の主題系、『劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト』と相当連関がある。 さくら達個々のゾンビィは、一度死んで生き返った。そして、本懐を遂げてきた。12話でも、さくらの本懐、というか成長が見える。かつ…

「魂のレヴュー」における「魂・契約・animus」——『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』評註その3

「権利能力は総て法律の付与するところであり、法律によらずして、当然権利能力を有するものはない。従って又如何なるものが権利能力を有するやも成法の決するところである。ローマ法の如く、私法を以て個人意思の支配域なりとし、総ての私法関係は個人意思…

フィクションを通した現実変容――『ゾンビランドサガリベンジ』10話

『ゾンビランドサガリベンジ』10話、令和はじめの佐賀の危機がすなわち佐賀が人々から忘れられることならば、『ゾンビランドサガ』という作品が話題作りになり佐賀が注目を集めている時点で実は既に目的は達成しているとも言える。 作中でのフランシュシュの…

『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は一体何をしているのか?

演劇は認知や感情や人間関係を舞台上で極大化することによって観客ひとりひとりが自分自身を見つめなおす拡大鏡であるところ、『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』では、演出などを自由に弄れるアニメにおいて、現実パート/舞台パートの2層構造にする…

悪い商業主義の詰め合わせ━━『漁港の肉子ちゃん』評註

基本的に観る気はなかったのだが、『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『映画大好きポンポさん』『シドニアの騎士 あいつむぐほし』と並べて本作が紹介されているのを見たので、昨夜のレイトショーで観ることにした。 が、直観は当たるもので(まあ当…

信用の来し方━━『映画大好きポンポさん』評註

今日は久々に映画が見れたということで、『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』に加えて、『映画大好きポンポさん』も観てきました。 『劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト』も『映画大好きポンポさん』も、劇中で描かれるフィクションが舞台と実写…

現実の舞台化と舞台の現実化━━『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』評註

この世は舞台、人はみな役者だ──ウィリアム・シェイクスピア さて、『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を観てきました。凄まじいパッションと畳みかけで圧倒されまくりでした・・・。 実はテレビ版は未見なので(!?)決着をつける前提になる人間…