人文学と法学、それとアニメーション。

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2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

神は人をひとところにとどめることもある──岡田麿里監督『アリスとテレスのまぼろし工場』評註

公開初日、9月15日(金)に観てきました。 海に面した製鉄所のある見伏町の中学3年生・菊入正宗は、同級生の笹倉大輔・新田篤史・仙波康成らと、受験勉強中のある年の12月、製鉄所で起きた大規模な爆発事故の日から、空間的にも、時間的にも閉鎖された見伏町に…

法廷という滑稽──『サントメール』評註

本作は主として法廷劇として進行する。 フランスのサントメールで起きた、15ヵ月の自分の娘を海岸に放置して溺死させた、セネガルからの留学生による殺人被疑事件。その裁判を、女性作家・ラマが傍聴していた。放置=殺害行為自体は認めるものの、「呪い」の…

枠の外──『アステロイド・シティ』評註

ウェス・アンダーソン監督作品は、『フレンチ・ディスパッチ』もはじめ、一作品も見ていない。本作が、私が初めて触れたウェス・アンダーソン監督作品である。 *** 冒頭で、『アステロイド・シティ』は、劇中現実での演劇であることが、舞台の外の語り手…

次のジェノサイドを食い止めるために──『福田村事件』評註

ちょくちょく謎の説明をし始め、また正論を演説しはじめる登場人物たちはまぁアレなのだけど、朝鮮人虐殺に至るメカニズム、特に背景にあった新聞の役回り(震災前から犯人不詳の凶悪犯罪については内務省からの要請で「不逞鮮人の仕業か?」などと記載して…

責任の所在は……──『CLOSEクロース』覚書

是枝裕和監督『怪物』と同じテーマをやろうとしているように思った。子供ゆえにまだ明確にできない、名付けられる前の感情の話。 ただ、あのラミのレミへの態度をもって、もちろんああいうこの結果を背負わせるのは酷な気がする…… 新しい学校でからかわれた…