人文学と法学、それとアニメーション。

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2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

各人のペースで受け容れて──『中二病でも恋がしたい』覚書

六花の中二病は、父を亡くし現実を受け容れることができなかったときに、いわば心の防壁として、中2病全開の勇太をたまたま見て、そのフィクションにより現実から遊離するあり方を借用したからである。 (※心の防壁として突飛な衣装を纏うあり方は、さながら…

ルックスは果たして無関係か?━━『アイの歌声を聴かせて』覚書

1 あらすじ 完全に今の日本の田舎の木造一軒家であるのに、そこに溶け込むAI機器。 たとえば、朝起きる際にアラームの代わりに対話型AIが語りかけてくる。 そしてご飯の炊き加減やみそ汁のネギを入れるタイミングでの火加減調整も口頭で指示できる。 周辺は…

置き去りの被害者━━『最後の決闘裁判』覚書

本作は三部構成で進行する。 冒頭:決闘開始のシーンが少し 第一章 ジャン・ド・カルージュにとっての真実 第二章 ジャック・ル・グリにとっての真実 第三章 マルグリット・ド・カルージュにとっての真実──真実 当然、「反復」であるから、「差異」は何かを…

アリアと泥合戦:描けるということは、存在するということ──『映画大好きポンポさん』評註

1 はじめに 『映画大好きポンポさん』には2つの軸がある。 一つは、ジーン監督を中心とする「夢と狂気の世界」の映画製作のお話であり、もう一つは銀行員アレンを中心とする信用構造のお話である。 後者の信用構造の話は別稿に委ね、本稿では前者の映画製…

『かげきしょうじょ!!』アニメ化で消されたもの──歌劇・歌舞伎・戦争

前シーズンやっていた『かげきしょうじょ‼︎』アニメ版を見て、特に野島聖先輩が気になり原作漫画で続きを読もうと思い立ち、読んでみた。 すると、原作漫画からアニメ版に翻訳するにあたり、極めて大きな改変がなされていることに気がついてしまった。 それ…

資本主義システムへの、あるいは特別な何者かになりたいという欲求への、ささやかな抵抗━━『Sonny Boy』試論

1 はじめに 『Sonny Boy』は学校のみが異世界に漂流するという基本設定や超能力の話、しゃべる犬猫、毎話毎話出てくる奇天烈な世界が特徴的な作品である。そして、作画や劇判もさることながら、主題系方面の読解も難解な作品である。 そこで、本稿ではまさ…

フィクションと現実──京都アニメーション放火殺人事件

1 社会 人間社会の基本的基盤は集団、徒党である。 徒党形成の鍵は贈与交換(échange)である。 2以上の集団間で財やサービスを恒常的にやったりとったりし、損得を曖昧で不透明な状況にしておくというものである。 この徒党、集団、あるいは社会が、個人を追…