人文学と法学、それとアニメーション。

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2021-01-01から1年間の記事一覧

フィクションの再現実化──『逃げ恥』婚と『ハイキュー!!』4期7話

1 逃げ恥婚 先日、契約結婚を描いた『逃げるは恥だが役に立つ』の主演であった星野源と新垣結衣の両名が結婚することが報告され、日本中が湧いた。 湧いたのであるが、しかし、なんかもやもやがあった。 もちろん、芸能人同士の結婚(それどころか訃報すら…

札幌地裁令和3年3月17日判決(同性婚不承認違憲判決)についての覚書

※1 以下は札幌地裁令和3年3月17日判決(同性婚不承認違憲判決)についての個人的なメモないし覚書である(が公開はする)。後日修正を施した場合には当ブログ上でその旨告知する。 ※2 「本件規定」とは「民法739条1項」「戸籍法74条1号」など「民法及び戸…

「安心して負ける」伝統の脱却──『ガールズアンドパンツァー 最終章第2話』覚書

明日はガルパン劇場版最終章第3話の封切りということで、第2話の雑感を今更ながらあげておく。本作までは、特に『劇場版』冒頭で大洗の足を引っ張る知波単に正直「学習せいや!!」とイライラしていたのであるが、それすらも本作の布石だったのかと思わずに…

「神」ならざる「人」の奇跡の物語――『シン・エヴァンゲリオン劇場版』評註

大体この手のビッグタイトルで、かつ伸ばしに伸ばされたものは、結末も複雑曖昧で、名前負けする場合が多いのであるが、しかし、本作は、その「エヴァンゲリオン」を終結させるにふさわしいものであったと思う。非常に満足である。 正直、テレビ版から始まっ…

政治の成立――『響け!ユーフォニアム』1期『かぐや様は告らせたい?』『帝一の國』『ノラガミARAGOTO』

「デモクラシー」が描かれている作品は無数にあるが、「政治」が描かれているのは近時だと『響け!ユーフォニアム』1期10話11話、『ノラガミARAGOTO』12話、『帝一の國』、『かぐや様は告らせたい?』6話あたりで、構造上「選挙」や「オーディション」が絡む…

最大判令和3年2月24日裁判所ウェブサイト(沖縄孔子廟違憲訴訟最高裁判決)覚書

これは、先日出された最大判令和3年2月24日裁判所ウェブサイト(沖縄孔子廟違憲訴訟最高裁判決。以下「本判決」という。)に対する覚書である。 (※なお「覚書」という形で明示的に保険をかけているように、今後大幅に考え方が変わる可能性がある。ただ…

比喩の持つ危険性――『はたらく細胞』におけるがん細胞の位置付け

「このように、英語では「病気[症状]にかかっている」は全て「病気[症状]を持っている」という所有のメタファで表されるのです。「彼はガンだ」はHe has cancer.です。(間違えてHe is a cancer.なんて言ったら、まるで彼がやっかい者だと言ってるみたい…

アンドレ・バザンの名作映画の理論――リアリズムと物語の弁証法

1. 「名作映画」(実写・アニメ両方を含む)とは何か? それを、アンドレ・バザンの理論を手懸りに考えてみたい。 まず確認しておくべきことは、バザンの映画論のスタートラインは写真であることである。 「アニメ(ーション)におけるリアリズムとヒュー…

ギャグマンガの矜持――『銀魂 THE FINAL』覚書

1月11日になりますが、『銀魂 THE FINAL』、観てきました。 見廻組編あたりから原作も追えてなかったわけですが、銀さん(と長谷川さん)にあこがれ、また『歌舞伎町四天王篇』『紅桜篇』『吉原炎上篇』などを繰り返し見、また和ロックと組み合わせたMADを楽…

スナメリの恩返しは恩返しにあらず――『きみと、波にのれたら』評註

0. 本作品の批評(Critique)をなすにあたっても、やはり最初に確認しておくべきことは、この作品は自然ドキュメンタリーではなく人間同士の関係を描いているというところである。そして、その中でも監督:湯浅誠あるいは脚本家:吉田玲子が「あるべき」と…

アニメ(ーション)におけるリアリズムとヒューマニズム序説――『リズと青い鳥』と『花とアリス殺人事件』

アンドレ・バザンはこう述べた。 「そして絵画や彫刻の起源に「ミイラ・コンプレックス」が見出されることだろう。徹底して私に抵抗した古代エジプトの宗教では、身体の物理的永続が死後の生を保証すると考えられていた。その点で古代エジプトの宗教は、人間…

アニメ版『ジョゼと虎と魚たち』に対するささやかな違和感――積み上げの無さとバットエンド

本作が公開された2020年12月25日から既に1週間以上を経過し、原作や実写版との対比の関係で本作を批判する論考が多数公開されている。 私は原作も実写版も見ていないので、その観点からの批判はできない。 しかし、アニメ版『ジョゼと虎と魚たち』については…