人文学と法学、それとアニメーション。

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2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

l'art pour l'art ──『ザ・メニュー』覚書

うーむむ。 前半のメニューのコンセプトの長話はまさに我々は言葉で料理を食べるのだなと思わされたし、また、l'art pour l'artとしての料理を、あるいは食い物にし、あるいは金に物を言わせ、あるいは虚栄心の対象としてきた連中──自分も一味であった──に一…

プライバシーがあるからこそ見えないのではあるが。──『ザリガニの鳴くところ』評註

私はテイトが真犯人だと思っていたので、なんともいやはや。 要は差別偏見で蔑視していた「汚穢」を、ぐるりと180度「神聖」に転回させているので、その意味では大転換であるが、しかし、カイアが常に街の人々から「外部」として扱われている点に変わりはな…

過ぎ去らない過去のために/メメントモリ──『すずめの戸締まり』評註

メメントモリ。 本作の主題はこれであろう。 予告PVで繰り返し流された「行ってきます」は、2011年3月11日の朝、被災地で交わされた何千、何万の「行ってきます」、そしてもう永遠に交わされることがない「行ってきます」であった・・・ 『天気の子』を経て…

なんとなくやりたいことは見えなくもないが…──『線は、僕を描く』覚書

主題は(タイトルから明らかなように)近代におけるアイデンティティの再帰性のお話。篠田湖山が明言するように、「君の線を見つけろ。そうすれば今度はその線が君を導いてくれる。」はまさにそういうことだろう。そして、そのためには自身の過去を直視し、乗…