人文学と法学、それとアニメーション。

人文学と法学、それとアニメーション。

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

大串兎代夫『天皇機関説を論ず』(邦人社、1935)と大日本帝国憲法1条4条31条の解釈

邦人主義綱領 一、我等ハ邦人一如ノ原理ニ則リ新日本文化ノ建設ヲ期ス 一、我等ハ新日本文化ヲ中外ニ顕揚シ以テ世界文化ニ貢献センコトヲ期ス 一、我等ハ各々ソノ職ニ順ヒソノ分ニ應シ邦人主義ノ実現ヲ期ス (大串兎代夫『天皇機関説を論ず』(邦人社、1935…

メタ倫理学者はいらない?――『PSYCHO-PASS 3 FIRST INSPECTOR』評註

本作は『PSYCHO-PASS』シリーズの主題からは少々離れた話、ということでいいのだろう。 (もちろん朱が推薦するだけあって灼は主題を捉える。すなわち、TV版『PSYCHO-PASS3』でも同じ台詞が出てきたが、ドミネーターの唯一好きなところは、引き金がついてい…

What's the Real,What's the Problem?――村木数鷹「マキァヴェッリの歴史叙述」国家学会雑誌132巻9・10号(2019)103頁以下についての覚書

村木数鷹「マキァヴェッリの歴史叙述」国家学会雑誌132巻9・10号(2019)103頁以下は我が国の、そして世界のマキァヴェッリ研究の水準を大きく更新した、画期的な(修士!)論文ということになると考えられる。 (もちろん本稿筆者は政治思想史も歴史学もイ…

続・読んでいない論文について堂々と語る方法?―岡野誠樹「憲法-訴訟-法――違憲審査と訴訟構造の交錯――」国家学会雑誌133巻1・2号69頁以下

1 バイヤールの真意 本記事のタイトルは無論、ピエール・バイヤール〔大浦康介訳〕『読んでいない本について堂々と語る方法』(筑摩書房、2008)からである。 バイヤールの主張は(明示はされていないものの)実は大きく2つに分けられるように思われる。 ①…

読んでいない論文について堂々と語る方法?―岡野誠樹「憲法-訴訟-法――違憲審査と訴訟構造の交錯――」国家学会雑誌133巻1・2号69頁以下

岡野誠樹「憲法-訴訟-法――違憲審査と訴訟構造の交錯――」国家学会雑誌133巻1・2号69頁以下は、読むまでもなく我が国の憲法学界に一ページを刻むことが約束された論文であり、そのうち加筆の上出版もされるであろう。 だから、そのうち読むことになる(嫌々で…

「自粛要請」の位相

1 「自粛要請」の日本社会――日本社会の平常運転 2020年2月頃から開始した今般のコロナ禍とそれに対する政府(日本国及び各都道府県含む)対応の際に「自粛要請」なる珍妙な言葉が繰り返し発出されている。 「外出しないよう要請」なら理解できる。しかし、…

In iureによるauctoritasの遮断――『ぼくらの7日間戦争』(2019)評註

本作には原作小説『ぼくらの七日間戦争』(宗田理、1985年)とそれをもとにした実写映画(菅原比呂志監督、1988年)があり、その上にこのアニメーション映画(村野佑太監督、2019年。以下「本作品」とする。)が存在している。 であれば、本作のテクストを正…

信用なき日本社会で「跳ぶ」こと――『劇場版SHIROBAKO』評註

1 問題の背景 TVアニメ版『SHIROBAKO』及び『劇場版SHIROBAKO』はアニメーション制作会社、武蔵野アニメーションの進行スタッフ・宮森あおいを主人公とする、アニメーション製作過程における人間関係を描くアニメーションである。そのことから直ちに、「ア…