人文学と法学、それとアニメーション。

人文学と法学、それとアニメーション。

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

少しでも気づかれてしまえば傷つきこわれてしまうような脆弱な心の機微──『ミューズは溺れない』評註

こういう映画を年に数本観る(見つける)ために映画館に通っているといっても過言でないスバラシイ作品……今思い返しても嘆息が出る。 1.ショット まずはショットが一々美しい。 冒頭の漁港で朔子が落ちる前の、朔子と光の視線が(モンタージュであるが)合うシーン。…

パリは、あるいは人の世は、少しは生きるに値する世界になったかしら?──『パリタクシー』評註

タクシーでの一日と老女の一生(回想)を被せたり(人生を一日24時間で表せば?という比喩はよくある)、タクシー運転手の目から見たパリ(それは目線の(高さ)の話だけではなく、赤信号無視で警官に捕まるとかレストランのトイレを借りるとか)を描いてる点だけで…

生の根源的偶有性と、それゆえの社会運動と。──『パリタクシー』覚書

「私には、自殺の才能すらなかったのね。」 これに尽きる。 何が? 人生が、だ。 我々は皆、ただ偶然死んでいないだけ。 ただそれだけであって、彼我の差はほぼない。 「生きるか死ぬかなんてただの運なんだって、私、小さい頃からずっと思ってきました。」…

絶頂から転落へ、そしてフィクションへ・・・?──『TAR ター』覚書

ひとことで言えば『平家物語』である。 *** まず、冒頭の文字が長い。 監督や役者の紹介、本来であればエンドロールにあるような内容が長々と流される。 プロロール(?)でエンドロールをやっているのである。 そして、その意図は、エンドロールが極端に…

法とは何か?──『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』評註

『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズは正直1期が至高であり、かつ1期で終わらせておくべきだった作品である。なまじ人気がでてしまっただけに、2期3期劇場版5作品とこれまで駄作が続いてしまった…が、今回は1期の話の本筋に回帰しつつはある(3期で灼が言う「…