人文学と法学、それとアニメーション。

人文学と法学、それとアニメーション。

2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

せめて、私の周りの世界だけは──『リコリス・リコイル 』覚書

『リコリス・リコイル』、マクロ条件の最悪具合はもはや所与の前提とせざるをえないなかで、ミクロの関係(千束とたきな、あるいは喫茶リコリスのメンツetc.)ではコミカルで最善の関係を築いていく、それが現下の日本の社会情勢と完全にマッチしているように…

付喪神からの照らし返し──『雨を告げる漂流団地』評註

1.はじめに 『雨を告げる漂流団地』、想定(想定とは?)とは違った話だったが、個人的にはとても好きな作品であった。これから何度も見返す作品になると思う。 見終わった直後は『ペンギン・ハイウェイ』とは違う作風だと思っていたが、夢のような経験と共に…

これ、『花とアリス殺人事件』でしょ…──『さかなのこ』覚書

『花とアリス殺人事件』の世界へようこそ!笑 一番最後に流れるリコーダー調の曲といい、世界観といい、『花とアリス殺人事件』である。 千葉の片田舎、そして成人してからは東京の、スモール・ワールドで繰り広げられる、ミー坊とその周囲の人たちの、世界…

『夏へのトンネル、さよならの出口』覚書

全体プロットのアイディアは悪くない、悪くないのだが・・・ やはりアニメ映画82分の尺では、花城あんずが8年間、いやひょっとしたらそれ以上の期間ずっと思い続けられるほど塔野カヲルを好きになる説得力ある積み上げには足りない。 劇中曲を流しながら重要…

暴力とポリコレ、そして運命列車──『ブレット・トレイン』評註

ホワイトデスとその一味が「怯えている」ことを喝破したエルダーは、まさに問題の所在を的確に見抜いている。そう、暴力を振るう者は、暴力に怯えているのである。『走れメロス』のディオニュソス王がそうであったように、猜疑と暴力、そして報復はセットで…

弓道と心の機微──『劇場版ツルネ ―はじまりの一射―(7.1ch上映)』評註

弓道というのは地味なスポーツである(たとえば『ハイキュー‼︎』が描くバレーボールと対比すれば明らかに動きは地味だしチームプレイ性も薄い)。 しかし地味であるが故に持つ競技への心理的機微の反映という繊細さと、さらに自分自身との戦いである部分にフォ…