人文学と法学、それとアニメーション。

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2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

人生の長短と何を残すか──『No Time To Die』と『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』

今年公開された『No Time To Die』と『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』の主題(の少なくとも一部)は、全くの偶然によるものであろうが、同じものだったように思う。 『No Time To Die』は、人生の残り時間を使って何を残すかということについての対比が軸に…

スピルバーグ監督『The Post』(邦題『ペンタゴン・ペーパーズ』)──報道の自由生成に向けた綱渡り

1 はじめに 本作は、アメリカ合衆国の表現の自由を巡る最高裁判例史にその名を刻むNew York Times Co. v. United States, 403 U.S. 713(1971)をモデルに、New York Timesではないもう一社の被上訴人Washington Postの社長キャサリン・グラハム(メリル・ス…

人というもの──呪い、友情、愛、理想と挫折──『劇場版呪術廻戦0』覚書

1. 友情と自信 これは原作の0及び本筋からしてそうであるが、呪いを軸とする以上、人と人との繋がりのあり方の話が根幹にあるのは間違いない。しかし、0の映画は、乙骨憂太の声優に緒方恵美を起用し、エヴァンゲリオンの碇シンジの筋を想起させつつ「誰か…

あなたをとおしてわたしをつくる──近代的自我形成物語としての『やがて君になる』

仲谷鳰『やがて君になる』はいわゆる百合作品の金字塔と目されている。 各種サブスクあるいはレンタルビデオ店での消費者の便宜、あるいは分析の開始点としてのprima facieとして百合ジャンルを使うのはともかく、分析の結果として使うことはおそらく不適切…

時が再び動き出すことを──『フラ・フラダンス』覚書

『フラ・フラダンス』、あまりに良すぎました… 基本軸は個性的で「今までで一番残念な」新人5人のフラダンサーが、ぶつかり合いながらも日々成長していく物語。そして合間合間に入る福島の固有名詞、具体的場所と、東日本大震災の傷跡の示唆。 死(つまり震災…