人文学と法学、それとアニメーション。

人文学と法学、それとアニメーション。

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

人気なのはなぜか?──『SPY×FAMILY』評註

今期のアニメでは『SPY×FAMILY』が人気を博しているようである。 かくいう私も毎週楽しみに見ている。 本作の面白いポイントは、アーニャの他人の心が読めるゆえの年齢不相応な大人っぽさとしかしぬぐえない子どもっぽさのギャップ、ロイドとヨルの裏の顔(ス…

魂の揺れと鎮魂、革命──『犬王』評註

「誠実であろうが、熱心であろうが、自分ができあいのやつを胸にたくわえているんじゃなくって、石と鉄と触れて火花の出るように、相手次第で摩擦の具合がうまくゆけば、当事者二人の間に起こるべき現象である。自分の有する性質というよりはむしろ精神の交…

年齢をダメな自分を変えない言い訳にしないために──『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』評註

本作の主題はズバリ、変人で傲岸不遜で人の話を聞かない厄介おじさん、ドクター・ストレンジが、本作中での(マルチバースでの自分や周囲の人々を含む)他者との関わりの中で、そのような自分でしかあれない理由を他人と本気で関わりそして傷つくことへの恐怖…

フィクションは人を救う──『ハケンアニメ』覚書

基本的には実写版『SHIROBAKO』といった趣きがある。 しかし、中身は『SHIROBAKO』よりも濃いように感じた。 もちろん、齋藤と行城、あるいは王子と有科の監督・プロデューサー関係の対抗軸や、齋藤と王子の覇権争奪戦、行城が持ってくる宣伝イベントの苦痛…

『チェルノブイリ1986』覚書

チェルノブイリ原発事故がテーマ。爆発の衝撃、現場のぬかるみや残骸の散らばり方と原発のデカさ、予想外が連発される事故現場、崩壊した原子炉の中に見える不気味な光、爆発初発に対応した消防隊の同僚がバタバタ火傷や急性放射線被曝で死んでいく様の恐ろ…

「跳ぶ」ために──『バブル』覚書

泡であるウタは、あの日、東京タワーでヒビキに歌を歌っているのを見つけて貰って、人間の言葉で言えば恋に落ちた。 それを快く思わない姉の泡が怒り、東京タワーの爆発が生じ、また東京が降泡現象で沈み、人が住めなくなった。 そんな中でウタはヒビキを爆…

人間という種をどう見るか?──『シン・ウルトラマン』評註

本作は色々な系譜の上に位置付けることができるだろう。 『ウルトラマン』シリーズの文脈はもちろんであるが、『シン・ゴジラ』、『シン・エヴァンゲリオン』のシリーズの文脈もそうであろう。 また「巨人」の文脈では近時の『進撃の巨人』がある。 そのよう…

地に足のついたデモクラシー、すなわち一人ひとりの「声」をきちんと聴くこと──『ボストン市庁舎』評註

『ニューヨーク公共図書館』よりも長いというのはもはや罪である(笑) しかし、かなり面白い。 本映画では抽象的な理念である「民主主義」が、地に足のついたもの=「議論」「コミュニケーション」として措定され、具体的な個人一人ひとりの「声」を聴くことと…

科学・フィクション・アニメーション━━石田祐康監督『ペンギン・ハイウェイ』評註

目次 1 はじめに 2 小説『ペンギン・ハイウェイ』の特徴 (1)リアリティの獲得 ア 自然科学の実証研究方法論 イ 「死」という謎 ウ 小まとめ (2)フィクションと径庭なき自然科学=現実 (3)まとめ 3 小説からアニメ映画へ―エウレカ― 4 おわりに …