人文学と法学、それとアニメーション。

人文学と法学、それとアニメーション。

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

比喩の持つ危険性――『はたらく細胞』におけるがん細胞の位置付け

「このように、英語では「病気[症状]にかかっている」は全て「病気[症状]を持っている」という所有のメタファで表されるのです。「彼はガンだ」はHe has cancer.です。(間違えてHe is a cancer.なんて言ったら、まるで彼がやっかい者だと言ってるみたい…

アンドレ・バザンの名作映画の理論――リアリズムと物語の弁証法

1. 「名作映画」(実写・アニメ両方を含む)とは何か? それを、アンドレ・バザンの理論を手懸りに考えてみたい。 まず確認しておくべきことは、バザンの映画論のスタートラインは写真であることである。 「アニメ(ーション)におけるリアリズムとヒュー…

ギャグマンガの矜持――『銀魂 THE FINAL』覚書

1月11日になりますが、『銀魂 THE FINAL』、観てきました。 見廻組編あたりから原作も追えてなかったわけですが、銀さん(と長谷川さん)にあこがれ、また『歌舞伎町四天王篇』『紅桜篇』『吉原炎上篇』などを繰り返し見、また和ロックと組み合わせたMADを楽…

スナメリの恩返しは恩返しにあらず――『きみと、波にのれたら』評註

0. 本作品の批評(Critique)をなすにあたっても、やはり最初に確認しておくべきことは、この作品は自然ドキュメンタリーではなく人間同士の関係を描いているというところである。そして、その中でも監督:湯浅誠あるいは脚本家:吉田玲子が「あるべき」と…

アニメ(ーション)におけるリアリズムとヒューマニズム序説――『リズと青い鳥』と『花とアリス殺人事件』

アンドレ・バザンはこう述べた。 「そして絵画や彫刻の起源に「ミイラ・コンプレックス」が見出されることだろう。徹底して私に抵抗した古代エジプトの宗教では、身体の物理的永続が死後の生を保証すると考えられていた。その点で古代エジプトの宗教は、人間…

アニメ版『ジョゼと虎と魚たち』に対するささやかな違和感――積み上げの無さとバットエンド

本作が公開された2020年12月25日から既に1週間以上を経過し、原作や実写版との対比の関係で本作を批判する論考が多数公開されている。 私は原作も実写版も見ていないので、その観点からの批判はできない。 しかし、アニメ版『ジョゼと虎と魚たち』については…