人文学と法学、それとアニメーション。

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l'art pour l'art ──『ザ・メニュー』覚書

うーむむ。

 

前半のメニューのコンセプトの長話はまさに我々は言葉で料理を食べるのだなと思わされたし、また、l'art pour l'artとしての料理を、あるいは食い物にし、あるいは金に物を言わせ、あるいは虚栄心の対象としてきた連中──自分も一味であった──に一泡吹かせて自身もろとも皆で一つの作品に(終末か?そういや汚いながらも天使も出てきたな…)というのもまぁわかるしある意味痛快だが、そんな『名探偵コナン』の犯人にありがちな動機なのかよ、とは思ってしまった

 

あと、「男の贖罪」のくだりはちょっと主題がズレたのではと思った。

 

あの最高のチーズバーガーこそ、本来シェフが作りたかった、「他人に喜んでもらうための料理」であり、なればこそ「持ち帰り」を選択した彼女を帰らせたのである。

 

せっかく束縛を解き「自由」にしたのだから、とことんまでやるしかない。

 

シェフがキング牧師の演説を引いていたように、「抵抗」すべきだったのである。しかし、沿岸警備隊登場時にこれまたシェフが指摘していたように、ヒロイン以外は後ろめたい過去があったため本気で「抵抗」できなかったのである。

 

全体的には金権主義 vs l'art pour l'artというべき内容である。

 

初島に着いたとき、料理批評家と太鼓持ちの会話の中に出てきた「エピキュリアニズム」はキーワードだが、本来l'art pour l'artサイドの言葉なのに、料理批評家サイドつまり金権主義サイドに換骨奪胎されている点が特徴的であった。