人文学と法学、それとアニメーション。

人文学と法学、それとアニメーション。

空元気──『特別編 響け! ユーフォニアム ~アンサンブルコンテスト~』

チューニングOK!

…ではない。

 

しかし、空元気でも元気(な様子)を見せないといけないときもある。

 

そこから始まる本作は、さながら放火殺人事件から4年で、完全新作として本作を出す京都アニメーションである。

 

もちろん、嬉しい。

 

3年の南中カルテットや1年の梨々花に久石、幹部連の麗奈に秀一、それにトゥッティの葉月と緑輝。みんなにまた会えるのは嬉しいし、ラスト、黒江真由の登場もほのめかされ、2024年春の最終楽章も予告された。

 

しかし、アンコンの演奏シーンの映像は全てなし。

 

全て音楽と写真と文字だけ。これではかなり物足りない。

 

未だ4年前の京都アニメーション放火殺人事件で失われた人たちの穴は、もとより埋まるはずもないのは百も承知だが、まだまだ埋まっていない。

 

他方で、もうこれ以上新作は作れない、事件の犠牲者たちの名前がエンドロールに出るとき、アンビバレンツな気持ちに襲われる。

 

やはり、未だ決着はついていない。

 

青葉に死刑判決が出、それが執行されたとしても、おそらく、決着はつかないだろう。

 

事件直後から抱いていた懸念のとおり──しかしこれは預言の自己成就かもしれないことには留意しつつ──もはや京都アニメーションの新作を心から楽しめる瞬間は、もう来ないのかもしれない。

 

しかし、きっといつか、そんな日が来ることを信じて、パンフレットとDVDを買ってきた。そうなれという願いをこめて。

 

窓の開け閉めの上手い久美子は、みぞれが指摘したように、本人に自覚はないが、周りをよく見ており、周りの人間にとって当たり前だが、本人は気づいていないことを見抜くのがうまい。それは他人の心の開け閉めが上手いことの比喩である。