冒頭。
戦後70年を過ぎ、再度軍拡を進める岸田政権への批判として、いわば宮崎駿自身の戦後世代の責任・総括として、東京大空襲の話から入るんかと思ったが、なんなんだコレは……
(そういや宮崎駿が復帰して本作作り始めたときのドキュメンタリーで昭和の木造の家々が密集する絵だけは出してましたわね、などと思い出す。)
戦争に対して腰が引けすぎやねん、『紅の豚』にしろ『風立ちぬ』にしろね。
そして『平成狸合戦ぽんぽこ』の、あの学生運動に負け挫折し社会馴化した狸たち。
敗北主義がかっこよかったのは90年代までである。
もう少し足掻いたらどうか。
〇饅頭起用についても地鰤パークでも毅然とした対応をとらなかったジブリそして宮崎駿。
どんどん期待が小さくなるね。
過去作の『ハウル』や『ポニョ』を、そしてまた『コクリコ』や『風立ちぬ』を彷彿とさせるシーンは多くあったが、それだけではある。
『ハウル』の時に見せたあの国際関係論てき洞察はどこに行ってしまったのか!
細田守『未来のミライ』をはじめとして、年を取ってくると自分の子孫のことが気になりだすのかな、という感じ。
あのちいかわみたいな有象無象があかちゃんの種で、で、それを食べるのがペリカンっていうのがまたよいよね。こうのとりはあかちゃんを運んでくるはずなのに。そしてあのちいかわが浮遊するためには、なまず様のデカ魚の内臓を掻っ捌かないといけなかったわけで、まあ生と死の話ではある。
や、あのアオサギがラスト「友達」と呼んだのはよかったよ?
家族の話から外れる連帯の話だったからさ。
でも、あの父親の強圧的・家父長的な態度といい
「あるとこにはあるんだねえ」と言われるような金持ち的振る舞いといい、
そしてサイパン陥落での海軍の戦死者の話を尻目に「ウチはますます儲かる」と言うさすがは軍需産業社長の無神経さといい、
その辺が嫌なわけでしょ、息子は。
そのあたりの、父親への制裁はないんか。
まあええですけど。
理想で完璧な世界の神になるよりも、悲惨で不完全な世界で泥臭く生きていく、というメッセージももはや陳腐であろう。
ただ、創造主になっていた大叔父が、相当昔の愛媛大学入試の英語の問題のように、後継者を探して神の地位を降りようとする話はギミックとしては面白かった。
これだったら、事前にTwitterで言われていたように、
アバンで目を覚ますと、庵野秀明と新海誠が縛られており、目の前には宮崎駿の死体が転がっている、そこでタイトル「君たちはどう生きるか」、くらいの実写の方が断然よかったんだが・・・苦笑