人文学と法学、それとアニメーション。

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Epicureanたちの祝宴──『交換ウソ日記』評註

 

タイトルが絶妙にダサい。笑

 

とはいえ、ウソが本当になる話はめちゃくちゃ好き。

 

また、手書きの手紙や交換日記で互いを徐々に知っていくという、今は失われてしまったロストテクノロジーが、スマホSNSアプリラインと同時並行で登場するのは本当によい・・・

 

黒田希美みたいな小さくておどおどした声も小さな他人に流されがちな子、いる。

 

桜田ひよりはめちゃくちゃ合ってた。

 

矢野先輩もよくわかっている。

「黒田はさ、人より少し遅いだけなんだ。だけど、今、黒田の周りにいる人たちは、待ってくれてるんだな。」

かつて待てなかった自分、そして今明確な拒否の返事を受け取った自分を踏まえて、希美に的確な助言を与える。

 

ここで種明かしがある。

そう、実は最初から瀬戸山が好きだったのは希美だったのだ!

 

瀬戸山は家庭での母の死から自分がヤングケアラーとして祖母と妹の面倒を見なければならなくなり、好きだったサッカー部を辞めたくないのに辞めると決めた、その心の叫び、やっぱりやめたくないという心の叫びを書いていた机の中の部分に、貼ってあった誰かからの「今は無理でもきっとまたできるよ」というメッセージに救われ、その主を(いつも放送部で先に行ってしまう希美の代わりに机を片付けていた)松本江里乃だと同定して、好きになったのだった。

 

江里乃の正論は本当に素晴らしい。嫌な同調をしない。林優子に対してぶつけた正論も本当に正しい。優子が米田のことを好きなら、それは米田の好意が自分(江里乃)に向いてることとは関係ない。ただ優子が米田に告白すべきなのだ。シンプルである。夏目漱石『それから』の代助くらいシンプルである。

 

優子の米田への告白シーンは複雑である(めちゃくちゃ好き。笑)

米田が優勝トロフィーのジンクスにあやかって告白しようとしていたのは江里乃だと優子は思っており、優勝できずがっかりしている米田に告白するつもりで、「あんた、江里乃のこと好きでしょ?」と訊き、「うん」という返事に対して「なら、私にとってはラッキーだった」という、事実上の告白のセリフを、しかし米田は、「優子も江里乃を狙っており、ライヴァルたる米田の心が折れたことを嘲っている」と受け取っている。マジもんの喜劇である。笑

 

希美が江里乃に日記のウソを告白するも、それでも「希美が他人を傷つけようと思って嘘をつくわけないじゃん」と信じてくれたのは本当によかったし、希美がずっと苦しんでたことを江里乃はよく透徹に見抜いたなァと…涙

 

まさに矢野先輩が言ったように、希美のペースに合わせてくれていたのである。

 

過去、幼稚園のときの希美がいじめられて泣き虫だった江里乃にやってたこと、すなわち、何があってもそばにいるをただ同じように実行してただけだったというのもまたよい。

 

瀬戸山は正直演技が浮いてたし、日記について割と早い目(カラオケからの帰り)に入れ替わり気づいてたのなら、それは嘘をついている希美を追い込みかねなかったわけだから、希美が嘘をついていたとはいえ、希美に早く知らせてあげる道義的責任があったのでは、と思わないではない。

 

なんだか放送室での告白時のアクシデント(全校放送マイクがオンに)でなーなーになってますが、私は今後とも追及していく所存です!

 

あーでも、楽しかったからつい切り出せなかったと言われると、それは希美にも同じレベルで跳ね返る話ではあって、結局相殺、終わりよければすべてよしか。いや、なんとなく釈然とはしないが。

 

しかしあの告白放送のときに屋上で昼ご飯食べてた米田と優子のバカップルは最高やな。笑笑 瀬戸山告白の事故での生放送は、事情を知る米田と優子(そして観客)からしたらたまらなく面白い。笑

 

そして、時間は下り、社会人パート。果たして、希美は声優?ラジオパーソナリティー?になり、どうやら矢野先輩の示唆と瀬戸山の応援を素直に受け取った夢をかなえたようである。そして、まだ瀬戸山と付き合っていた。米田と優子の結婚式のスピーチの相談をしている──。