かぐやと御行という、表面的にはエリートで恋愛頭脳戦をバチバチやってる両名の弱さと向き合う話。
かぐやが早坂経由で御行に伝えた「隠しごとのない関係性」が理想のロマンティックだ、というのは王道である。なぜかぐやは「告らせたい」、昔のように冷たい彼女として、ファーストキス後に御行にあたっていたかといえば、この冷たい「一面」(「本性」ではないだろう)をこそ知って、その上で愛してほしい、というメッセージだった。
なのだが、他方でそれは際限のない「本当の気持ち」への後退になりかねない。
意識や理性が「飛ぶ」ことが、外向けのペルソナを纏わない「本物」なのだと考えるからこそ、性的エクスタシー(あるいは違法ドラッグの使用など)をこそ「本物」だと見るのだ、という話のコロラリーになっていないかの警戒は必要だろう。
「信頼」観念の創出はなかなか一筋縄ではいかない道程なのである。
その意味で、かぐやの理想の主張だけでなく、(かぐやからの本心の告白からさらにもう一度切り返す)御行の現実に即した主張もまた説得力がある。
御行はかぐやが本当はみんなに加わりたいのに、傷つけてしまうことから、あえて冷たく振る舞い皆を遠ざけていたことを知っていた。それをわかっていて踏み込んだ。しかしかぐやは御行のダメな面をあまり知らない。ここに非対称性があり、御行はかぐやに嫌われるのを恐れ、全てを曝け出せない。
しかし、落とし所としてかぐやから提示される、御行が疲れたときには、一緒に休んでください、は本当によく練られたものだったと思う。
石上とつばめ先輩、そしてミコの方の行く末もめちゃくちゃ気になる(原作未読)。