人文学と法学、それとアニメーション。

人文学と法学、それとアニメーション。

過去と未来と現在と──『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』覚書


本作においては、主題歌『クロノスタシス』が象徴的である。クロノスタシスとは過去の一瞬の出来事が長く尾を惹き目の前にちらつくこと。佐藤と降谷の目の前に去就する今は亡き者たち、エレニカの目の前に去就する今は亡き者たち、それらと現在のプラーミャを繋ぎ、克服し、未来へと向かうために必要な手続き。

 
毛利探偵が灰原を庇いトラックの前に身を投げ出し頭部を負傷するというシーケンスも、この脈絡である。それは無条件に子を庇うということであり、それはそのまま、息子を失ったエレニカの深い悲しみとプラーミャへの復讐の強固な意思に転化する。そのにコナンを重ねてしまったエレニカは、気を失い確保されたプラーミャに銃を向ける。「復讐のために、悪いことも沢山してきた」と。しかし、コナンがエレニカの前に両手を広げて立ちはだかり、「プラーミャを殺しても息子さんは戻って来ない」と告げ、銃を握ってゆっくりと下ろさせ、エレニカを抱きしめる。かなりあざといシーンだとも言えるが、これ以上の救済もないように思う。
 
ナーダ・ウニチトージティのメンバーが今後将来に向けて生きていくためには、みなの信望を集めるリーダーたるエレニカのこの大転換=決断こそが必要で、ゆえに渋谷大爆発を防ぐためにナーダ・ウニチトージティは協力できるのである。  
 
余談だが、ハロウィンのジャコウランタンの被り物をした敵はどうしても苛立つ偽マフティが想起されてしまう。笑  
あとはロシア・ビンタという意図せぬ形の時事の話題も……