人文学と法学、それとアニメーション。

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愛を切ることと愛で繋ぐこと──『ファンタスティックビーストとダンブルドアの秘密』評註

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本作のテーマの一つは愛であり、そのコインの裏側の孤独である。

 
ダンブルドアとグリンデルバンドとの愛の血の誓いの束縛。それを打破したダンブルドアにグリンデルバンドが告げたのは「私以外にお前を愛せる者はいない。お前は一生孤独だぞ。」であった。
 
あるいは、ダンブルドアの弟の子・クリーデンスは孤独に身を浸した結果、グリンデルバンドに与し、命を縮めたが、最後にダンブルドアらに協力し、ダンブルドアの弟(すなわち父)と和解して最後を迎える。
 
さらに、ジェイコブとクイニーはマグルと魔女である断絶を超えて、ラストに愛で結ばれ結婚する。
 
この血の穢れをこそ嫌っていたのがグリンデルバンド一派の純血主義であった。
 
そして、グリンデルバンドと組んだ国際魔法連盟会長やドイツ魔法省は、皆黒服で身を包み、幹部以外は同じように見えるまさに「徒党」であり(たとえば『ハウルと動く城』の魔女の使い魔)、であるからこそニュートの兄てせうすに保釈請求の機会なしに闇から闇に葬ろうとするし、女性の会長候補に毒を盛ろうとする。さらに、グリンデルバンドがその力を攻撃に使い、ダンブルドアが防御に使ったことで呪縛が解けたことも示唆的である。
 
なればこそジェイコブに代表される「正直」を貫くことこそが鍵であり、それはダンブルドアにうわべを使って思ってもない言葉をかけたニュートがダンブルドアに批判されたことからもまたうかがえる。
 
そして「全貌を知る徒党」ではなく「全貌を知らない個々人」の動きが徒党をやぶる鍵になるのは、サラミスの海戦さながらである。