人文学と法学、それとアニメーション。

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舞台設定の難しさ──『金の国 水の国』覚書

 

金の国 水の国』。

 

断続的に戦闘状態であった金の国と水の国。

その王同士のかつての盟約により、金の国は一番美しい王女を水の国の青年と、水の国は国で一番賢い青年を王女とそれぞれ結婚させる、という約束が結ばれていた。

 

その履行をするのだが、金の国は猫を、水の国は犬をそれぞれ嫁がせる。これを知った王女は、王に知られると戦争になりかねないと秘匿し、その協力者として水の国の国境地帯でたまたま出会った青年を選ぶも、実はその青年が猫を送られた婿であった!

 

そしてその青年は嘘のまま王女の花婿として振る舞い、左大臣さらには他の王女派と組んで、金の国王が水の国へ戦争を仕掛けるのを阻止し、国交を開き、水路を引こうとする。他方で開戦派の右大臣は青年の暗殺を目論む。

 

結局、王女の「お父様が国王でよかった」の意味をおそらく勘違いした王が右大臣に唆されて出した暗殺命令を取り消し、正式に婚姻を認め、水の国と国交を開きめでたしめでたし。

 

……であるが、終始リアリティがない。

 

特に暗殺劇の中で5人しか味方がおらず包囲されているのになぜか生き延びる。

 

また金の国も水の国も人口規模に見合った国家・社会制度が窺えず、全てがふんわり人間ドラマに解消されてしまっている。

 

その意味で全く感情移入できなかった。

 

他方で、右大臣が怪しい祈祷師で、元は国王の頭痛を和らげた市井のマッサージ師であったという宗教とネポティズム、さらにはその右大臣が水の国の軍事占領計画を立て、議会を通さず秘密裏に正規軍を増やしていたという部分は、2022年から2023年の、安倍元首相銃撃事件からの統一協会政界汚染にネポティズム(お友達優遇)、さらには岸田首相による国会を通さない安保三文書の改定と敵基地攻撃能力保有への解釈変更の話と全く同じ構造の問題に対する批判に奇しくもなっている。