人文学と法学、それとアニメーション。

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見守るということ──『THE FIRST SLAM DUNK』覚書

父に続き長兄ソータをも失った宮城家の、特に母とリョータの視点からの再構成?といってよいのか。

 

いや、『スラムダンク』原作未履修なのでよく知らないのだが、桜木花道が主人公で、「安西先生、バスケがしたいです」「諦めたらそこで試合終了ですよ」といったセリフが交わされるバスケ漫画だという、一般的な(?)認識からすると以外な、繊細な過去の話から始まった。

 

ミニバスでこけたリョータを見て、とっさに駆け寄ろうとしたが、でも足を止めた母が、ラスト、海でリョータの両腕を揺さぶり、「おかえり、リョウちゃん」と言う。

 

「かあさん、つらいはずなのに、バスケをやめろとは一言も言わなかったから。」

 

フェンスの向こうから、あるいは観客席からリョータを見守ることしかできない母の役回りは、『リコリス・リコイル 』のミカと千束の関係にも通じる。そう、本質的に親は子を見守ることしかできないのである。ちょうど観客がスクリーンに映るキャラクターたちを見守るしかないように。

 

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他のメンバーについても、繊細な一面が描かれる。

 

特に赤城の真面目さと地道な努力、そしてメガネくんの真面目さと地道な努力は、本当に頭が下がる。

 

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山王工高戦ラスト8秒、山王工高に逆転を決められてから桜木花道の全力疾走。白黒の漫画タッチになるそのラスト8秒の攻撃。流川から花道へのパス、花道の美しい軌道を描くシュート。それら全てが無音の中で展開される。

 

劇場全体が一体となり、まさに固唾を飲んで見守る感覚。子連れも多く満員近い人で、途中ざわついてもいた劇場が、あのラスト8秒の攻防では本当に誰一人スクリーンから目が離せず、他の一切のことができない、そういった映画だった。私は原作未履修なので、本当にどうなるのか知らず、食い入るようにスクリーンを見ていた。

 

なかなかない感覚であった。

 

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渡米後、プロリーグでのリョータと山王工高エースのマッチアップのラストは、さながら『ハイキュー‼︎』原作である。笑